知っておくべきLGBTの基礎知識!日本での現状や海外の制度
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、それぞれの英語の頭文字からとったセクシャルマイノリティの総称です。昨今、生まれながらの性別にとらわれない性別のあり方が見直され、世界中で同性間の結婚や、結婚と同様の権利を認める動きが活発化してきています。知っておきたいLGBTの基礎知識と制度についてまとめました。
Contents
LGBTとは?
定義
LGBTとは、性的少数者の総称を言います。 「レズビアン(女性同性愛者)」、「ゲイ(男性同性愛者)」、「バイセクシュアル(両性愛者)」、「トランスジェンダー(性別越境、性別違和)の頭文字をとって名付けられました。 とくに、トランスジェンダーの概念は幅広く、心の性別と体の性別が一致しない方は、FTM(Female To Male=女性から男性)やMTF(Male To Female=男性から女性)と呼ばれ、心の性別がなく、無性・中性として生きている方は、FTX(Female To X)やMTX(Male To X)と、細かく分類されます。 これらの呼称は、自らのことをポジティブに語る用語として北米・ヨーロッパで生まれ、現在では世界中で使われています。
割合
LGBT 総合研究所が2016年に実施したマーケット調査によると、LGBT に該当する人は8.0%というデータ*1があります。これは、左利きやAB型の人よりも多い割合となります。
*1…「LGBT に関する意識調査」(LGBT 総合研究所・2016)
LGBT以外のマイノリティ
LGBTは「レズビアン」、「ゲイ」、「バイセクシュアル」、「トランスジェンダー」の4つに限られた名称になり、その他のマイノリティは含まれていません。 例えば、 ・インターセックス(I)=性分化疾患。性腺や染色体、外性器の形状などが、解剖学的に男性/女性の身体はこうであるという固定観念とは生まれつき異なる状態 ・アセクシュアル(A)=無性愛者(同性も異性も好きにならない) ・クエスチョニング(Q)=自分の性別や性的指向に確信がもてない、または決めることに不安を感じている状態 などのマイノリティがあります。
自らがLGBTと告白した芸能人
タレントのはるな愛さんや佐藤かよさんなどは、自身がLGBTであることをカミングアウト。GENKINGさんは、ゲイであることを公表しています。 また、お笑い芸人では鳥居みゆきさんがレズビアンを告白し、江頭2:50さんやメープル超合金のカズレーザーさんなどもバイセクシュアルであることをカミングアウトしています。 また、海外では女優のジョディ・フォスターやエレン・ペイジがレズビアンであることをカミングアウトしています。アップルCEOのティム・クックや、シンガーソングライターのエルトン・ジョンなどの文化人もゲイであることをカミングアウト。 スポーツ界でも多くの選手がLGBTをカミングアウトしています。2016年のリオオリンピックでは、ラグビー7人制女子の会場で、大会関係者の女性がブラジル人選手のイザドラ・セルロさんに公開プロポーズ。2018年の平昌オリンピックでは、フリースタイルスキー男子のアメリカ人選手、ガス・ケンワージーさんが恋人の男性にキスをしたシーンが生放送されたことも、話題になりました。
日本におけるLGBTへの対応
現状
2017年3月、日本政府はいじめ防止基本方針の改訂を行い、LGBT生徒の保護の項目がはじめて盛り込まれました。これに先立ち、2016年には教職員向けに、LGBT生徒への対応を記した手引きも発行しています。 しかし、実際はいまだにLGBTに対する差別やいじめがあるのが現状です。 また、異性カップルと同等の権利が法的に保障されていない点も課題のひとつ。 2015年に東京都渋谷区議会で、同性カップルに対し結婚に準じる関係と認める「パートナーシップ証明」の発行が可決されたことを皮切りに、いくつかの市区町村で実施されるようになりましたが、いずれも条例や要綱での実施であり、法的な拘束力はありません。 例えば、同性パートナーへの遺産の相続権がないことや、レズビアンカップルやゲイカップルへの生殖医療の適応など、法的整備や受け入れ体制が進んでいないことも大きな課題です。
カミングアウトへの不安
前述したことを踏まえてみても、いまだ日本でのLGBTのカミングアウトにはハードルが高いのが現状です。
日本労働組合総連合会が実施した「LGBTに関する職場の意識調査」*2によると、職場に同性愛者や両性愛者がいることに抵抗を感じる人は、3人に1人というデータがあります。また、男女別にみると、抵抗を感じる人の割合は男性が女性の約2倍となり、40代、50代と年代が上がるにつれて高くなる傾向があります。
*2…「LGBTに関する職場の意識調査」(日本労働組合総連合会・2016)
まだまだ、差別を受けるケースも珍しくなく、心ない言葉をかけられたり、まるでその場にLGBT当事者がいないかのように差別的な言動をとられたりすることもあるようです。
結婚制度について
LGBTの結婚制度については課題が山積みです。 現在の日本の法律上、パートナーシップ法や同性婚を認める法律は存在していません。つまり、パートナーとの関係性も法的には保護されていないということ。しかし、同性婚を法的に認めるか否かの議論はいまだに進んでいないのが現状です。
海外におけるLGBTへの制度
各国のLGBTへの対応
LGBTに対する世界的な動きについて、順を追ってご紹介します。 1970年代 ゲイパレード「プライド」の開催。法的権利獲得や差別撤廃などを求めました。 ↓ 2009年 世界最大級のゲイパレード、「サンパウロ・ゲイ・プライドパレード」の参加者が推計320万人を突破しました。 ↓ 2010年 アイスランドの議会は、同性婚を認める法案を全会一致で可決。首相自身がレズビアンであることを公言しました。 ↓ 2011年 国連人権理事会が、性的指向や性自認に基づく暴力行為や差別に重大な懸念を示す決議を採択しました。 ↓ 2014年 インドで「第三の性」(トランスジェンダー)を法的に認める最高裁の判決が出されました。 ↓ 2015年 アメリカ全州で同性婚が合憲となり、異性カップル同様に法的な保証が認められるようになりました。また、ベトナムでは同性婚を禁止する法律が廃止となり、事実上の同性婚が可能に。
このように、少しずつLGBTを保護する法律が制定されてきています。 例えば、オランダ、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ共和国を含む24カ国では、国全土で同性婚を合法化。異性婚と同等、それに近い権利、または部分的な権利を与えるということが認められました。 また、オーストリア、台湾も遅くとも2019年までには同性婚が認められることになっています。 その他、イスラエルをはじめフィンランド、オーストリア、ドイツ、スイスなど20カ所以上が登録パートナーシップを持っています。 しかし一方では、LGBTに対し圧力を強める国もあります。 ロシアでは、2013年6月に同性愛宣伝禁止法が成立し、未成年者に「非伝統的な性的関係」(同性愛)について情報提供することが禁止されました。 このことが理由で、アメリカ・フランスなどの首相がソチオリンピックの開会式をボイコットしたことも記憶に新しいものです。 また、ナイジェリアでは2014年に同性婚禁止法の成立、ウガンダでは2014年に反同性愛法が成立し、同性愛者への罰則を強化しました。 特に、アフリカ地域における圧力は顕著で、54か国中38か国で同性愛行為が禁止されています。
広がる企業間のLGBTへの支援制度
LGBTの就職・企業の対応
「まだ結婚しないの?」「オカマっぽい」「男っぽくて変」などといった差別的な言動が日常の会話で起きているという問題があります。 しかし、差別を受けたくないからという理由で、職場でカミングアウトするLGBTがいないということもあり、社内のLGBT対応が進まない現状があります。 LGBT当事者としては、同僚に避けられたり偏見を持たれたりすることへの不安、着替えやトイレ、異性向けの会話に参加する時など、本当の性別を隠すことのストレスから100%仕事に集中するのが難しいという人も少なくありません。 会社に居場所がない…と、自分の能力を発揮できなくなることもあり、悩みを職場で誰に相談していいかわからず、孤立を深めてしまうというような深刻な問題もあります。
LGBTへの企業の対応
しかし、最近はLGBTを自社サービスへ適応させている企業も増えつつあります。
■JT
多様化(ダイバーシティ)の推進を経営計画の課題とし、2016年には経済産業省が選ぶ「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出。さらに、LGBTに関する取組みの評価指標である「PRIDE指標」で最高指標である“ゴールド”を受賞しました。
■ANA
2015年、「ANAグループダイバーシティ&インクルージョン宣言」を発表。2016年7月より家族向けのマイレージプログラムを同性カップルも共有できるように変更しました。
■サントリー
2011年にダイバーシティ推進室を設置し、2013年春には全課長を対象としたLGBT研修を実施。また、2015年より全従業員にむけてサントリーグループ・ダイバーシティ通信「いろどり」を発行し、“一人ひとりの「考動」革新”を行っています。
■ソフトバンク
同性パートナーも「家族割」に加入できるサービスを携帯キャリア企業内で最初に展開。また、2017年には「PRIDE指標」で“ゴールド”を受賞しました。
■ライフネット生命
2015年11月、異性間の事実婚に準じる「同性パートナー」への死亡保険金受け取りが可能に。同業他社に大きな影響を与えました。
■ユニリーバ
LGBT支援プログラム「ユニリーバ・プライド・ジャパン」を開始し、人事制度の改定や社員教育、アライ・グループによるコミュニティ活動を実施しています。
■ジョンソン・エンド・ジョンソン
LGBTに関する理解啓発と、ダイバーシティとインクルージョン文化の醸成に関する活動を行う、有志の当事者及びアライの社員によるグループで、「Open&Out」を発足。LGBTの社員に対し社内コミュニティを提供するほか、LGBTに関する問題と知識に関しての意識醸成や啓発活動などを行っています。
■パナソニック
会社の行動基準の改定(「性的指向、性自認に関する差別的言動を行わない」)や差別禁止規定、倫理規定、ダイバーシティポリシー等の中で明文化するほか、社内規定で同性婚を容認しています。
■野村ホールディングス
LGBTの支援者であることを表明する、LGBTA(I am an LGBT Ally)というステッカーを制作し、自分の席やパソコンに貼る運動を実施。
その他、NTTグループや日本IBM・NTTグループ・日本マイクロソフトなどは、結婚の祝い金や休暇制度を同性婚への適用や福利厚生の対象を同性パートナーにも拡大しています。
また、イオンや第一生命では、LGBTについて理解を深める目的で、LGBTに関する社内研修を管理職や人事部門、一般従業員向けに実施しています。
これら以外の企業でも、就活生のLGBT学生向けに会社説明会等のイベントを実施し、安心して応募ができるような環境を整えたり、LGBT従業員の相談窓口を設置し、個別相談に応じる体制整備をしたりする企業も増加しています。
監修/株式会社Letibee 代表取締役 外山雄太
2014年慶應義塾大学卒業。高校時代の失恋やカミングアウトを原体験として、在学中にLetibeeを創業。「好きな人を当たり前に大切にできる」社会を目指して活動している。在学時代から始めたイラストレーターやグラフィックデザインのスキルを活かし、研修やワークショップだけでなくアートプロジェクト"harMony"を展開している。
■株式会社Letibee
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本記事は、2018年03月09日公開時点の情報です。情報の利用並びにその情報に基づく判断は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮したうえで行っていただくようお願いいたします。