【結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ④】ふたりで話そう「将来の子どもの話」
連載企画【Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ」】。
産婦人科医で不妊治療専門医の齊藤英和先生と『妊活たまごクラブ』編集長の米谷明子さんが、いつか赤ちゃんが欲しいと思っている方向けに、結婚準備中からできる「プレ妊活」についてお話するスペシャル対談です。
最終回となる今回のテーマは、「将来の子どもの話」。子どもについて考えることは、結婚したらふたりの将来を考える上で大切なことなので、ぜひパートナーと一緒に読んでみてくださいね。
- PROFILE
- Dr.齊藤&米谷さん
<連載記事>
第1回:【Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ】妊活スタート前に知っておきたい!妊娠しやすい体づくり~女性編~
第2回:【Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ】妊活スタート前に知っておきたい!妊娠しやすい体づくり~男性編~
第3回:【Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ】いくらかかる?知っておきたい「妊娠出産と妊活にかかるお金の話」
自然妊娠で3人子どもが欲しいなら、妊活スタート年齢は23歳!?
米谷さん:結婚準備中の方は、今は新しい生活のことでいっぱいで、「子どものことなんてまだ先」と思われるかもしれませんね。
Dr.齊藤さん:今は「まだ先」と思うかもしれませんが、不妊治療専門医の立場で言いますと、いざ子どもが欲しいとなったときに「もっと情報を早く知りたかった」と言われることがよくあるんです。そんな方をたくさん見てきましたから、実際に子どもを持つ、持たないにかかわらず、子どもを持つための情報は、結婚したときに知っておいたほうがよいと思います。
米谷さん:私もそう感じています。『妊活たまごクラブ』という雑誌を作っていますが、必ず妊娠しなくてはいけないとお伝えしているのではなく、「妊活」を通して、自分や相手の体を見直して、長く健康でいる人生とはどういうことかを考えてほしいのです。子どもが授かることだけがゴールではないと思っているんですね。
Dr.齊藤さん:子どもをきっかけに、自分たちの体のことを知っていてほしいですね。
米谷さん:先生からご紹介いただいた「妊娠達成確率別に見た『妊活を開始すべき』上限年齢」というグラフがあります。これをご説明いただけますか?
Dr.齊藤さん:これは、子どもが1人欲しい場合に、女性が何歳までに妊活をスタートしたら実現するかの確率を統計で示したグラフなんです。「自然妊娠」というのは自然に妊娠した場合、「体外受精(IVF)」は体外受精をして妊娠が成功した場合。例えば「絶対欲しい」を90%くらいの確率と考えると、自然妊娠の場合は32歳くらいまでには妊活をトライしたい。でも体外受精という方法を選択するなら36歳くらいでも90%の確率で子どもはできる。
米谷さん:子どもが1人、絶対に欲しい場合ですね?
Dr.齊藤さん:でも、35歳くらいからはそもそも妊娠成功確率は下がるので、絶対欲しいという確率を達成するのは厳しい。でも、できれば欲しいという確率でよければ、37歳くらいまででも自然妊娠することはできる。
米谷さん:これは考え方によりますね。何が何でも絶対子どもが欲しい! という気持ちなのか、授かったらうれしいよね、くらいなのかにもよりますよね。75%、50%の確率の場合は、できないことも覚悟しておく必要がありますね。
Dr.齊藤さん:これは開始すべき「上限年齢」ですからね。そこからスタートではないです。それと、これは子ども1人の場合の確率ですが、子どもを複数持つことを希望する場合、妊娠適齢期を考えるともっと早く妊活をする必要があります。
米谷さん:それをまとめた表がこちらですね。
米谷さん:絶対に自然妊娠で3人欲しいとなると、23歳でもう妊娠準備を始めなくちゃならないんですね。体外受精を選択しても28歳となると、ずいぶん早くからスタートしないといけないんだなぁと感じました。
Dr.齊藤さん:でも、将来子どもは3人欲しいけど「できれば欲しい」程度であれば、自然妊娠なら31歳でも可能となりますし、50%の確率でOKならば35歳でも可能となります。考え方によりますね。
米谷さん:このグラフは現実を突きつけられたようで、考えさせられますね。カップルになった男性と女性が、将来の子どものことをどう考えているかによります。将来子どもを持ちたいかどうか、もそうですが、何人欲しいかお互いがどう思っているか…。
Dr.齊藤さん:具体的な年齢をこういうグラフで示しておけば、それなりにふたりで話し合って計画できるのではないかと思います。
米谷さん:40歳を過ぎても自然妊娠する可能性はもちろんある。でも50%という確率をどう考えるか…。
Dr.齊藤さん:40歳から45歳の間でまた妊娠達成率はかなり急激に下がります。
米谷さん:これだけリアルな数字を見ると、みなさんご自身の年齢に照らし合わせて、ドキッとするかもしれませんね。逆を言えば、これを読んでいる結婚準備中の人には「今知ることができてラッキー」なのかもしれません。
Dr.齊藤さん:自然妊娠が難しそうとなった場合、自分たちで貯めたお金を不妊治療に投じてもいいと思うなら、それでもいいと思います。でもお金をかけたくないと思うなら、早めに自然妊娠を狙う必要がある。
妊娠率だけじゃない、さまざまなリスクが年齢とともに上がる
米谷さん:このグラフの妊娠率というのは、あくまで妊娠する確率ということで、その先赤ちゃんが無事生まれるかというのは別ですね。流産率が年齢によって高くなったり、出産で死亡したり、染色体異常のリスクもあったりします。
Dr.齊藤さん:その通りです。妊娠・出産のリスクのほかに、年齢が高くなると、母体そのものの病気も増えるということもあります。がんで言うと、20代後半から急に増え始めるのは乳がんと子宮がん。
米谷さん:それ以外の大腸がんなどは45歳過ぎると、またさらにリスクが上がりますよね。
Dr.齊藤さん:やはり健康なうちに、リスクが少ないうちに妊娠・出産したほうがいいんです。
米谷さん:病気以外のリスクというと、年齢が高くなると親の介護のタイミングと重なることもあるかもしれない。そうすると、いつ産むのかを考えるって大事ですよね。
Dr.齊藤さん:それぞれの選択ですね。仕事によっても、家族の関係によっても違うでしょう。ただ、大切なことは自分自身が納得して人生設計をすること。突然何か起こったときに行き当たりばったりの対応になってしまうと、いちばんいい選択にたどり着けないこともありますから。
米谷さん:将来を考えて納得したうえで「私は人生の後半で忙しくていいんです」という選択なら、それでいいんですよね?
Dr.齊藤さん:もちろん、それはそう。どれがよくてどれが悪い、じゃないですから。
米谷さん:結婚準備中の方には、シビアな話だと思うんですけれど、幸せだからこそ、ぜひ今こそ知ってもらいたいと思いますね。
妊娠は奇跡的なこと。基礎知識は男女とも持ってほしい。
Dr.齊藤さん:特に若い人たちに気づいてもらいたいのは、健康に対する意識。若いころは、今の健康や体力が何年後も変わらないと思いがちです。
米谷さん:たしかに、そうですね。
Dr.齊藤さん:年寄りが説教してると思わないで聞いてほしいのだけれども(笑)、健康のありがたさは、若いころには自分ではわからないものなんですよ。僕だって、20代なんてお産が何件あっても徹夜が続いても平気でしたよ。それが30代、40代とだんだん苦しくなってくる。10年後20年後も健康で体力で物事をこなせると考えがちだけど、なかなかそうはいかないということを覚えてほしいです。
米谷さん:はい、私もそこはわかります。
Dr.齊藤さん:すべてが体力や健康で補えたことが、だんだんそうじゃなくなるということ。昔は大家族だから、おじいちゃんおばあちゃんがいて言ってくれたりしたものですが、今はいないでしょう? 同世代同士だけで付き合っていると見えないこともあるんです。
米谷さん:連載第1回でお話した「年齢とともに卵子の数がどんどん減っていく」ということも、若い人は案外知らないでしょうね。
Dr.齊藤さん:こういうことって、学校の授業の中でみんなが一斉に知るシステムにしてほしいですね。これまでの性教育で教えているのは、生理の仕組みと、あとは避妊と性感染症くらいでしょう。それで避妊をやめたら簡単に妊娠するものと、みなさん思っているんです。でも妊娠するタイミングって、月1回の月経周期にたったの6時間くらいしかチャンスがないわけです(第1回参照)。妊娠とはこんなに奇跡的なことなんです。
米谷さん:「早く知っておけばよかった」という人はたくさんいますね。
Dr.齊藤さん:妊娠の基礎知識は男女とも持ってないと。長い人生の中で大切なことです。そして、男性も女性も、結婚をきっかけに自分の健康を見直してもらいたいです。
米谷さん:これを読んでくださった方はきっともう大丈夫ですね。これからふたりで、将来どんな家族でいたいかをたくさん話し合ってほしいと思います。齊藤先生、ありがとうございました。
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齊藤英和(さいとう・ひでかず)
元国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 副センター長。現在梅が丘産婦人科ARTセンター長。
米谷明子(よねや・あきこ)
ベネッセコーポレーション『妊活たまごクラブ』編集長。『妊活たまごクラブ』誌面で齊藤先生に妊活特集の監修をいただく。
https://st.benesse.ne.jp/ninkatsu/
(撮影/古谷利幸 文/関川香織 企画編集/たまひよ、ウエディングパーク)
※本記事は、たまひよとウエディングパークの共同企画です。
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本記事は、2019年12月02日公開時点の情報です。情報の利用並びにその情報に基づく判断は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮したうえで行っていただくようお願いいたします。