【結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ①】妊活前に知っておきたい!妊娠しやすい体づくり~女性編~
新しくスタートする連載企画【Dr.齊藤と妊活たまごクラブ編集長に聞く!結婚準備中にできる「プレ妊活」のススメ」】。
産婦人科医で不妊治療専門医の齊藤英和先生と『妊活たまごクラブ』編集長の米谷明子さんが、いつか赤ちゃんが欲しいと思っている方向けに、結婚準備中からできる「プレ妊活」についてお話するスペシャル対談です。
第1回は、女性のための「妊娠しやすい体づくり」からスタート。結婚式には来てほしくない「生理」についても語られています。
全4回にわたる連載企画、ぜひパートナーと一緒に読んでみてくださいね。
- PROFILE
- Dr.齊藤&米谷さん
そもそも妊娠ってどういうこと!? 赤ちゃんができるタイミングは超ピンポイント
米谷さん:さて、いきなりなのですが、「妊娠」について教えてください。
Dr.齊藤さん:「妊娠」とは、おもに1個の卵子が卵巣から飛び出し排卵する時期に性交を行うと、精子と卵子が出会い受精し、細胞分裂を繰り返しながら子宮に着床することで、成立します。
米谷さん:シンプルですね!
Dr.齊藤さん:ただ、排卵は通常月に1回。精子はいつでも射精できますが、体外に出た精子が生きているのは実は約3日程度しかなく、排卵に合わせてタイミングが合ってようやく受精するわけです。この時期がずれるだけで、妊娠の確率は低くなります。
さらに、もし卵管が詰まっていたり、子宮に筋腫があったり、また精子や卵子の状態によっても妊娠の可能性は変わります。
米谷さん:そもそも、卵巣から排卵した卵子が生きている時間は24時間程度と言われますよね。
Dr.齊藤さん:不妊治療専門医の視点で言うと、一番いい状態なのは6時間くらい。
排卵して6時間以内で、そこに精子が入ればスムーズに受精して細胞が分割していきます。
米谷さん:なるほど。1回の生理周期の中で、妊娠に絶好の状態が6時間しかないって、ものすごく限られたタイミングなんですね。すごい。
Dr.齊藤さん:精子だって、たしかに3日生きているとはいえ、やはりフレッシュな方がいいからね。
米谷さん:いずれにしても、ピンポイントでタイミングが合わないと妊娠しない。大変な確率ですね。
妊娠適齢期はズバリ20代!?
米谷さん:ところで、今、日本の平均初婚年齢は、男性31歳、女性29歳*1だそうです。
男女ともに結婚する年齢が高くなっていますが、「結婚適齢期」と同時に「妊娠適齢期」という言葉も、あるんでしょうか?
*1…平成28年度人口動態調査
Dr.齊藤さん:医学的にみても、あると思いますよ。
0=基礎体温定義上の排卵日(実際の排卵日より約2日遅い)
Dr.齊藤さん:20代後半から、妊娠率が下がっていますよね。
米谷さん:排卵日2日前くらいの性交だと妊娠率が高いですが、自然に排卵してセックスした場合の妊娠率は、20代前半だと50%、後半だと40%ですね。
Dr.齊藤さん:30代後半になると、さらに確率は低くなりますね。ほかの数値を見てもね、卵の数ももちろん、年齢が高くなればリスクは高くなります。流産率も、30代の後半から高くなります。
周産期死亡率や母体死亡率も、母体の年齢が上ほど高くなる、というデータもあります。妊娠高血圧症候群、前置胎盤、染色体異常など、妊娠中のトラブルもありますね。医学的リスクから考えると、20代が妊娠適齢期といえます。
卵子は、年齢の0.5歳年上。自分の体よりも先に年をとる!?
米谷さん:年齢が高くなると、「卵子の老化」も考えられます。
Dr.齊藤さん:卵子の数は、お母さんが妊娠5カ月のころ、つまり自分が胎児のころに一番多くて、元の細胞が20数回分裂して700万個になり、残りは分裂しないため古くなっていくだけなんです。そして、初経が始まるころまでには20万~30万個まで数が減ります。
米谷さん:初歩的な質問になってしまうかもしれませんが、排卵が起こるまで卵子たちは卵巣の中で、何をしてるんですか?
Dr.齊藤さん:じっとしてるだけですよ。ただ、卵子が成熟して排卵までにかかる時間が約3カ月あるので、その間に少しずつ育っていく卵子たちが排卵予備軍です。
まず1000個くらいの細胞が動き始めて、だんだん淘汰されていき、直前の月経周期までには、20数個くらいになっている。そして1個になるまで、また淘汰されていくんです。
米谷さん:1個しか排卵しなくて、そのほかの卵子たちはどうなるんでしょうか?
Dr.齊藤さん:卵巣の中で死滅して吸収されていきます。だからどんどん減っていく。
米谷さん:動き始めるまではじっとしているけれど、性能は衰えていくということですか?
Dr.齊藤さん:そうですね。時がまったく止まっているわけではなく、時間がたつことの影響は受けますね。
米谷さん:では、生まれてからの年齢+0.5歳、一緒に育って年をとった卵子が女性たちの中にいる、と。
Dr.齊藤さん:それが卵子の老化ってことです。
挙式前後の「生理」をどうするか? 結婚準備中にできること
米谷さん:結婚式直後から、妊活をスタートしたいというカップルは多いみたいなんです。でも、結婚式だけは生理が当たらないようにピルを飲んで生理をずらすことは大丈夫なんでしょうか。
Dr.齊藤さん:特に問題はないですよ。生理の時に、体調悪い人もいるでしょうし、一生に一度のイベントですしね。
米谷さん:結婚式が済んだら、すぐにでも授かりたい場合は、ピルをやめればいいのでしょうか? ピルは、飲むのを止めてからどれくらいで排卵がありますか?
Dr.齊藤さん:すぐに生理が再開する人もいるし、けっこう長くかかる人もいる。個人差はあります。ほかにもピルのいい点は、子宮内膜症を予防すること。たとえば30代半ばまで妊娠経験がなければ、子宮内膜症のリスクはどんどん上がるんです。
ピルで生理をコントロールするのは、避妊だけでなく子宮内膜症になりにくいという副効果があるから、使ってみてもいいと思います。
もちろん、ピルには血栓症などのリスクはあるから、医師に相談してから使うべきですけれども。
米谷さん:そもそも月経周期が乱れていて、結婚式のあたりに生理が来るのか来ないのかわからないという人の場合はどうでしょう? そもそも排卵もしていないことも考えられますか?
Dr.齊藤さん:そうですね。排卵しないと、頻繁に少しずつ出血することもあって、それを生理と勘違いしている人もいます。この場合、機能性出血で排卵していない可能性があります。
米谷さん:通常は28日くらいというのが一般的な生理周期ですよね?
Dr.齊藤さん:もう少し長めの人も短めの人もいて、医学的には25~38日周期くらいが許容範囲とされています。そういう人の場合は、妊活する前から、体の状態を整えておく必要がありますね。基礎体温をつけると排卵がわかるので、ぜひつけてほしいです。自分でわかる範囲で、生理を把握しておくことをおすすめします。
米谷さん:もし生理不順の人がいたら、結婚式の前から婦人科は行っておいたほうがいいですよね。そして結婚式の予定に合わせて排卵を調整しておくことも大事ですね。
Dr.齊藤さん:そうですね。結婚式が終わったらすぐに妊娠したいと思っているなら、例えば排卵誘発剤などで整えて、結婚式の時には生理にならないようコントロールし、さらに翌日に排卵するようにしてすぐ妊娠に備えることもできます。
米谷さん:そんなことも可能なんですね!
栄養状態、整ってる? 過度の美白、ダイエットにご注意!
米谷さん:卵巣や子宮の働きも大事ですが、そもそも赤ちゃんを産む体として、健康状態が整っているかどうかは大切ですよね。妊活の妨げになるのはどんなことがあるのでしょうか。
Dr.齊藤さん:タバコは男女ともによくないですね。お酒の影響もあるけれど、今の若い人は傾向として栄養状態そのものがあまり良くない。例えば、葉酸とビタミンDは、ほとんどの人が足りてないんです。
米谷さん:戦前と比較しても、現代の方がはるかにビタミンD不足だって言いますよね。
Dr.齊藤さん:日焼けしたくない人が多く、皆さん遮光してますよね。たしかに紫外線を浴びればシミになるし、年齢を重ねれば皮膚がんの心配だってあるので、紫外線対策はしていいんだけど、ビタミンDが作れない。
米谷さん:ビタミンD不足が、妊活ではどのようような事に影響するのでしょうか。
Dr.齊藤さん:そうですね。まず着床に影響し、妊娠しにくくなります。あと、生まれた赤ちゃんがビタミンD不足だと、骨が曲がってしまうこともあります。
米谷さん:妊活の前段階から、生まれてくる赤ちゃんに影響が及ぶということですね。でもみんなどうしても美白の方が大事で…。
Dr.齊藤さん:1日に20~30分、太陽光を浴びればいいだけなんですけどね。あるいはサプリメントで補ってほしい。あと葉酸も足りません。
米谷さん:葉酸は、ちゃんと摂ろうとすると、すごく大量の野菜を食べなくちゃいけないんですよね。
Dr.齊藤さん:最近は飲み物に入っているものもありますね。サプリメントでとるのがいちばん手軽。葉酸をとると、卵の質が上がるんですよ。そして妊娠が成立したとき、赤ちゃんの神経管が閉じる過程で起こる奇形を防ぐために葉酸は必須。
だから、妊娠する1カ月以上前から意識してとってほしいです。それから葉酸は、心筋梗塞など成人病予防にもいいんです。
米谷さん:私も、「葉酸はいつでも大事」と婦人科の先生に言われて飲んでます。
Dr.齊藤さん:実は、妊活を考える男性にも大事です。葉酸には、ストレスから発生する物質を代謝させる働きがあるので飲んでおいたほうがいいです。
米谷さん:栄養といえば、最近の若い女性、みんなすごく痩せているのが気になっています。
Dr.齊藤さん:痩せていることで困るのは、生理が止まることです。
米谷さん:なんで痩せると生理が止まるんでしょうか?
Dr.齊藤さん:体内脂肪って余計な物と思われがちだけど、ホルモン産生の臓器なんですよ。脂肪から出たホルモンが頭の中枢に作用するんです。脂肪が少なくなりすぎても、また増えて太りすぎても、ホルモン分泌に影響します。
米谷さん:ホルモンを作るのは、脳とか甲状腺とかだけじゃないんですね。痩せすぎも太りすぎもよくないことがわかりました。
Dr.齊藤さん:データ的にもBMI*2が21~22くらいの標準体重がいちばん妊娠しやすいし、妊娠してからの赤ちゃんのリスクも少ないんですよ。
*2…BMI=ボディ・マス・インデックスの略。身長(m単位)の二乗で体重(㎏)を割った数値で、体形の指標となる。BMI18以下はやせ型、19~24が標準、25以上が肥満となる。
米谷さん:結婚式に向けて、結婚準備中の女性はダイエットと美白を頑張る方も多いと思うのですが。
Dr.齊藤さん:美白はいいのですが、その分ビタミンDと葉酸は、サプリでとることをお勧めします。ダイエットも、BMIはせめて20は越えていてほしいです。もちろん、痩せてて妊娠しないわけではないのですが、妊娠する確率は低く、赤ちゃんへのリスクも増えます。
米谷さん:BMI21~22で体重キープして、ビタミンDと葉酸をサプリメントでとる。基礎体温つけて、自分の体を知る!これがプレ妊活・妊娠しやすい体づくりの基本というわけですね。
PLOFILE
齊藤英和(さいとう・ひでかず)
元国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 副センター長。現在梅が丘産婦人科ARTセンター長。
米谷明子(よねや・あきこ)
ベネッセコーポレーション『妊活たまごクラブ』編集長。『妊活たまごクラブ』誌面で齊藤先生に妊活特集の監修をいただく。
https://st.benesse.ne.jp/ninkatsu/
(撮影/古谷利幸 文/関川香織 企画編集/たまひよ、ウエディングパーク)
※本記事は、たまひよとウエディングパークの共同企画です。
この記事の画像一覧(4)
本記事は、2019年11月11日公開時点の情報です。情報の利用並びにその情報に基づく判断は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮したうえで行っていただくようお願いいたします。